えっちゃんのブログ

介護職員の資質

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先輩や同僚に「介護職員に向いていない」と言われ、ショックを受けた経験はありませんか?
または、同僚や部下に「介護職員に向いていない」と思っている方はいませんか?

以前勤務していた特別養護老人ホームに山本和夫さん(仮名:21歳)という方が入職してきたことがありました。山本さんは、機械関係の専門学校を卒業後、ヘルパー2級の資格を取得して、特別養護老人ホームへ入職してきました。

※2013年4月1日の介護保険法施行規則改正によって、「ホームヘルパー2級」が「 初任者研修」に変わりました。介護スキルを講義と演習で学ぶことができる『介護職員初任者研修』は、これから介護の仕事を始める人に取得してほしい資格です。

入職して3カ月は試用期間です。

入職時に雇用契約を結びますが、3か月は試用期間として勤務します。3か月の試用期間中に双方から申し出がなければ、正式な職員として雇用されるのです。
山本さんも3カ月間は、プリセプティとして、プリセプターが中心となって指導に当たり、特別養護老人ホームの業務や利用者の介護知識、技術を学んでいきます。
1か月間は、日勤のみで、多職種の業務を理解するために介護福祉士だけでなく、看護師、栄養士、生活相談員(社会福祉士)に付き、多種職の仕事を理解するための研修も行います。身体介護には必ず指導者が付き、単独で行う業務はありません。

試用期間中の新人介護士

1か月目が終わるころ、指導にあたった職員から、「山本君は、介護職員に向いてないかもねぇ~・・・でも、頑張って指導しないとね!」という声が聞こえて来たのですが、山本さんのプリセプターもチームリーダーも山本さんに丁寧に根気よく指導にあたりました。
2ヵ月目になると、各指導者の指示下で日勤の他、早番、遅番等の勤務を経験し、移乗介助、入浴介助、排泄介助、食事介助など具体的な介助方法を学びます。
3か月目になると、夜勤の見習いが2回あり、一度はプリセプターと一緒に、二度目はチームリーダーと一緒に夜勤を行い、問題がなければ、正式に採用となります。
ところが、3か月目に入ったころ、私のところへ介護主任から、「山本さんには、介護職員としての資質が全くありません。このまま採用したら利用者へ迷惑がかかると思います。」と報告がありました。

他の介護士から不満が出始めた新人介護士

その前にも、職員から直接苦情をもらっていました。
「私・・・山本君と勤務したくありません!」「入浴介助中、○○の乳でかいよなぁ~あっははは・・・利用者に向かって言うんですよ!」
「山本君って福祉に向きません!」「おむつ交換中、○○のうんこ臭すぎるわ!やっとれん!って利用者の前で言うんです!」
「山本君って辞めさせてもらえませんか!」「○○、体重重すぎ!今夜飯抜き!って利用者に向かって言うんですよ!」
山本さんの暴言は、度重なる注意にも改善されることがなかったようです。

私は、山本さんと面談をしました。
山本さんは、仕事は楽しいし、頑張って働けそうだと言いました。
困っていることもなく、指導に当たってくれた人はとても優しかったと言います。
わたしは、山本さんに利用者に対しての態度やや暴言について注意しました。
残り1か月間で改善されなければ正式な雇用契約は結べなくなります。と付け加えました。
山本さんの表情が一瞬変わり、ドアをドン!と強く締めて面談室から出ていきました。

その半月後、私は、プリセプターと介護主任の報告書をもとに、試用期間中の報告書を作成し、施設長に提出しました。
内容は、継続勤務を認めないというものでした。
施設長室から出てきた山本さんは、「こんな施設、俺の方から辞めてやるわ!」と言って出ていかれました。
しかし、翌日、山本さんの母親が施設長室に怒鳴り込んできたのです。
山本さんもその母親も興奮しており冷静な話し合いが出来ませんでしたが、結局、山本さんは施設を去って行かれました。

退職に至った新人介護士

その後、山本さんはいくつかの介護施設を転々としたと言います。
施設を去って3年目に入ったころ、知り合いの施設の方から山本さん訃報の連絡をもらいました。自殺だったと言います。

もし、山本さんがあのまま施設で働いていたら、介護職員として成長させることが出来ただろうか・・・。
そうしてたら、彼の人生も変わっていたのではないだろうか・・・。
色々考えはしますが、利用者の尊厳を大切にしたいという基本的なことが山本さんには無かったのが残念でした。

介護の仕事は、利用者の方やご家族の方の話しをよく聴くことが基本です。
介護職員は人の話によく耳を傾け、どういう要望があるのか、相手の立場に立って考え、思いやる気持ちを持つことが大切です。

相手を気づかったり、思いやりを持つことは、資格がなくてもできる事ではありますが、中途半端な気持ちでは継続することが難しい仕事です。
そのため、介護職員は思いやりだけではなく、忍耐力があることも必要です。

そして介護の仕事は、高齢者や障害者の他、何らかの介護が必要な方のご家族や一緒に働くスタッフなど、人と接する機会が多い職業です。
そのため、時には対象者の方たちからイライラした気持ちをぶつけられたり、同僚との人間関係で悩むこともあるでしょう。
そのため介護の仕事をするには上手くストレスを発散できる人や、自分の気持ちを切り替えることができる人が向いていると言えます。

明るく元気な介護士

介護職員は複数の利用者のお世話をすることが多く、危険を察知して素早く的確に状況判断が行えるかが問われる職業です。
利用者の方の顔色や目の輝きをみて、相手の状態を把握したり、変化を感じ取ることが出来なければいけません。
日常生活の中で利用者の微かな変化や異常をキャッチし、看護師などの医療職種に伝えるための力も必要な能力かと思います。

そして介護職員は日々学びの姿勢を持つことも大切です。
介護に関する見解や技術は日々進歩を続けており、新しい考え方や介護方法が生み出されています。
そのため、日々介護の専門家の発表など、常に新しい情報を手に入れる必要があります。
本を読んだり、研究発表や勉強会などにも積極的に参加し、新しい知識や技術を吸収することも大切ではないでしょうか。

最後に、介護職員は、まず自分自身の健康管理ができなければその責任を果たすことはできません。

介護職員は、、昼夜問わず24時間にわたってその生活を支える必要があり、介護チームの中でシフトを組み交代勤務を行っています。
8時間ずつ勤務を行う3交代制のほか、日勤8時間・夜勤16時間という2交代制などがありますが、いずれの勤務も休憩時間はあるものの、残業や2交代制の16時間の勤務を想像するだけで健康な心身が必要だということが分かると思います。

また、勤務中に座る時間はあまりなく、常に利用者の介護のために活動を続け、利用者の移動介助や入浴介助、排泄介助など十分な体力も必要になります。

対象者が高齢者の場合などは、亡くなる場面に立ち会うこともあるため、精神的にもつらい思いをすることもあります。
そういった意味でも、心身が健康で、自分自身の健康管理ができることが重要ではないでしょうか。

こういったことからもお分かりいただけるように、介護の仕事は誰にでも務まるというものでは無い、とても厳しく尊い職業であると思います。
日々、献身的に介護のお仕事をされている介護職員の方々に敬意を表します。

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