高医療依存度利用者への援助

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医療依存度の高い方への考え方 高医療依存度利用者への援助
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医療依存度の高い方への考え方

ケアの基本的な考え方

施設において、医療依存度の高い利用者をケアするためには、介護と看護との連携を深め、医師や栄養士、相談員などを含めたさまざまな専門職が協力し対応することが求められます。

なかでも直接処遇職員は、利用者にとって最も身近な存在です。病状が進展する前に、体調変化をいち早く察知することにより、利用者の尊厳を守り、また命を守るための重要な役割を担っていることを認識しながら、心のこもったケアを提供します。

ケアの目標

① 利用者の生活の幅を広げることを考える

医療依存度の高い利用者は、チューブ類が身体に装着されていたりして、自由に身動きがとれません。しかし、寝ている時間が長くなると、体の関節が硬くなってしまい、徐々に手足の関節が拘縮または変形します。他にも褥瘡が形成や、肺に機能が低下するなど、廃用症候群の進行が懸念されます。

ケアを行うものは、まず利用者の身体の安楽を考え、褥瘡や拘縮を予防することが大変重要です。
私たちにできることには限界があり、痛みを取り除くことはできません。しかし、会話の時間を増やしたり、手を握ったり、できるかぎり離床して車椅子に移乗したりと、生活の幅を少しでも広げるように心がけ、心身の苦痛を和らげるようにします。

②湿度や温度を一定に保ち、五感に働きかける配慮を行う

高齢者は体温を調整する機能が低下するため、居住空間の環境が体調に大きな影響を及ぼします。

夏季は冷房の温度設定に注意し、外気との温度差を5℃以内に抑えます。
冬季はかぜやインフルエンザなどに注意し、温度や湿度を一定に保ちます(下表参照)。

臥床時間が長い場合は、居室内の視界に入りやすい場所に、植物や花を置いたり、昔からなじみのある物や写真を飾ったりすることが五感に働きかけることにつながります。また、時には窓際に移動して季節の移り変わりを感じたり、外気に触れて肌で直接感じることも大切です。


■室内の温度・湿度の目安

  温度 湿度
春  ・  秋 18~20℃ 55~65%
夏   季 19~24℃ 45~65%
冬   季 17~24℃ 40~60%
③ささいな変化を見逃さず、敏感に思いを感じとる

医療依存度の高い利用者は、言いたいことが思うように伝えられない方が多いです。これまでの生き方や生活環境、元気だった頃のエピソードなど、さまざまな情報も収集しながら利用者の思いを探り、どんな様子かどんな表情なのか、敏感に感じとろうとする探究心を持ちながらケアします。

初めから全てをわかろうとするのではなく、悪戦苦闘しながらでも前向きに接して、お互いの信頼関係を深めましょう。その積み重ねが、利用者に受け入れられ、次の段階としてその人の理解を深めることにつながります。

④こまめな水分補給で脱水を予防する

高齢者は、のどの渇きを自覚しにくい「口渇感低下」の状態になり脱水を起こしやすいです。基本的には食事以外に1日1ℓ程度の水分摂取を目安にするとともに、衣類や寝具を調整したり、排尿回数や量、色などを観察することも大切です。

⑤日々のかかわりのなかから、感情表現を理解する

喜怒哀楽の表現は、人によって異なります。日々の生活において利用者と深く接していれば、どんなときにどんな感情表現をするのかが理解しやすくなります。

高齢者の身体的特徴として、加齢に伴う視力、温痛覚の低下、諸臓器の萎縮などの身体機能の低下に加えて、記銘力の低下、認知症の進行など精神的な機能も低下します。

しかし、たとえ機能が低下しても、聴力は最期まで残っているといわれています。反応は乏しくても私たちの声はしっかりと届いているでしょう。認知症の人であっても、感情が障害されているわけではありません。

感情を察するだけでなく、共感しともに喜んだり悲しんだりすることは利用者の安心につながるたいへん重要なケアです。共感してくれる相手がいると怒りや悲しみは軽減され、喜びや楽しみは倍増するでしょう。

主な症状と観察のポイント

医療依存度の高い利用者は、自分の症状をうまく伝えられない場合が多いです。そのため、以下に示すような直接処遇職員の気づきが大切です。また、その重要な変化を看護職員や医師などに伝えるコミュニケーションも大切です。多職種が情報を共有することが、安心・安全なケアを提供するためには大変重要です。

(1)意識障害

脳の障害などで現れることがあります。

①声かけに返事があるか

②開眼できるか

③胸などを少し叩いても開眼しないか、などをみます。

(2)発熱

発熱は肺炎や何かの感染症、脱水状態などで現れます。いつも触れている皮膚温より温かい場合、体温を測ってみます。

(3)皮膚の色

皮膚の色が黄色味を帯びたり、眼球の白い部分が黄色くなることを黄疸といいます。肝臓疾患などで現れることがあります。

(4)咳や痰

普段より食後に多くなった、むせることが増えたなどです。高齢者や臥床時間が長くなったり、認知症が進むと、食べ物の飲み込む機能(摂食嚥下機能)が低下し、誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。

(5)口の中の状態

舌などが乾燥している場合は、脱水傾向で発熱しやすくなります。また口の中が汚れている場合は、雑菌などが気管や肺に入り、肺炎を起こしやすくなります。清潔保持のためにも口腔ケアは重要です。

(6)呼吸

「ぜーぜー」と呼吸音がする場合は、肺炎以外にも気管支喘息を起こしている場合があります。早めの対応が必要になります。

(7)便の性状や色

便秘を繰り返し腹痛が強くなる場合は、腸閉塞や大腸癌などの可能性があります。色が黒いタールのような状態は、胃や腸からの出血を起こしている場合があります。


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