医療依存度の高い利用者のケアの実際
経管栄養(胃ろう)とは
胃ろうとは、疾病などの原因で経口的な食事摂取が困難になった人に行う栄養補給法の一つです。
胃瘻(いろう)を増設する際は、内視鏡を使って腹部から胃に通じる小さな穴を開け、ここにカテーテルを通して胃に直接栄養を入れるための「小さな口」を造ります。造設術は局所麻酔で行い、約15~20分程度で済みます。
胃ろうにはチューブの付け外しができるボタンタイプとチューブタイプがあり、バルーンで固定するものとバンパーで固定するものがあります(下表1参照)。
表1 胃ろうの種類と特徴
腹壁型 | ボタン型 | 長所 |
目立たない、自己抜去がほとんどない 逆流を防止できる、カテーテルの汚染が少ない |
短所 | ボタンの開閉がしづらい場合がある | ||
チューブ型 | 長所 | 栄養チューブとの接続が容易 | |
短所 | 自己抜去しやすい、チューブの内側が汚染しやすい | ||
胃壁型 | バルーン型 | 長所 | 交換が容易 |
短所 | 短期間(1~2か月)で交換が必要 | ||
バンパー型 | 長所 | カテーテルが抜けにくい、交換までの期間が長い(4~6か月) | |
短所 | 交換時に痛みや圧迫感がある |
経管栄養の方法
① 経管栄養剤の内容は、利用者の消化機能の状態などにより栄養剤を選択します。
② 1日の摂取量は、高齢者では栄養剤を20~35キロカロリー/kg、水分量は30ml/kgが目安となります。
③ 嘔吐や逆流を生じやすい人には投与速度を遅くしたり、栄養剤の粘度を上げたり、1回量を少なくして投与回数を増やすなどして対応します。
④ 経管栄養時は、45度以上のギャッジアップ姿勢、またはいす等に座った状態で行い、投与後も1時間程度はギャッジアップまたは座位を維持します。ただし、どうしてもギャッジアップが制限される場合は、20~30度で右側臥位または左前斜位とします。
⑤ 投与中はせき込みや吐き気がないか、冷汗やチアノーゼがないかなど、全身状態の観察を行います。
⑥ 投与後は水を注入し、チューブをきれいにしておきます。
注意すべきトラブル
① ろう孔周囲の感染や肉芽形成、栄養剤の漏出による皮膚のただれなどが起こりやすくなります。
② 胃ろうが抜けてしまった場合は、急速にろう孔が収縮・閉鎖します。
③ 下痢やダンピング症候群(食後の冷汗、動悸、めまい、腹痛、下痢などの症状)に類似した症状があります。
実施にあたっての注意点
注入中は吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、腹部膨満感がないか、呼吸状態は変化していないかを観察します。
注入中に喘鳴が強くなった場合
いったん止めて分泌物を吸引します。
嘔吐した場合
誤嚥の危険性があるのですぐに注入を中止し、顔を横に向け、口腔気管内の吸引をしっかり行います。
顔色が悪くなったり、呼吸が苦しそうになった場合
少し待って落ち着いてから再開します。誤嚥しているようならば、嘔吐時と同様の対応をします。
熱が出たり、痰の色が黄色く変わってきた場合
早めに受診します。
胃ろうの固定バルーンは、胃内で胃壁の穴にふたをするように働きます。固定が緩むと胃液や注入物が漏れやすくなったり抜けてしまいます。また、胃の蠕動運動で十二指腸にバルーンが運ばれてしまうことがあるので、挿入部と固定する位置の確認は確実に行います。
胃ろう周囲に発赤やびらん、出血、肉芽形成がみられた場合
医師に相談します。
胃ろうが抜けてしまった場合
直ちに医師に連絡し、指示に従い受診をします。
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