某大学総合福祉学部から依頼を受け講演したことがあります。
講演後に、学生から出た質問に回答しました。
お読みいただければ私の介護に対する考え方がどのようなものか、ご理解いただけるのではないかと思います。
私が社会福祉法人在職中に、自身に医学的な知識がないことで十分な援助ができなかったと感じた職員が、さらなる学びを求めて看護学校へ進学したいと申し出てきました。私は積極的に応援しました。その数は5名に上ります。
向上心を持って介護業務に取り組んでいる介護士が多くいることを非常に嬉しく思いました。
また将来的に福祉の世界に戻ってきてくれることを願っています。
特養ではどのような症状の入所者の人たちがいますか?
まず、症状とは“病気や怪我の状態”を言いますので、入所者に多い疾病及び障害について下図を参照いただきながら説明します。
【高齢者に多い疾患と障害】 | |
呼吸器系 | 肺炎、急性上気道炎、肺線維症、肺気腫、肺癌、肺結核 |
中枢神経系 | 脳血管障害(脳梗塞・脳出血)、老年性認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病 |
循環器系 | 高血圧、虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)、動脈硬化症、不整脈、弁膜症 |
消化器系 | 胃・十二指腸潰瘍、胃・食道・大腸癌、胆嚢・胆管炎、胆石症、肝硬変症、ヘルニア |
泌尿・生殖器系 | 糖尿病、痛風、甲状腺疾患 |
骨・関節系 | 変形性関節症、関節リウマチ、骨粗鬆症、大腿骨頚部骨折 |
感覚器系 | 視力障害(白内障・緑内障など)難聴、言語障害 |
血液系 | 貧血 |
その他 | 褥創、疥癬 |
高齢者に多い疾患は、一般の内科や外科で広くみられる病気であり、生活習慣病の延長上にある慢性疾患といえます。特に心身の退行期に特有の病的老化に属する疾患が中心となります。しかし、高齢者の場合は、これらの疾患に合併する感染症も多いことから、急性の病状へ変化することもあります。
特養では、重度な認知症の方も多く居られますので、直接処遇職員が個々の利用者の疾病や合併症を理解し、「異常の早期発見」をすることが重要だと思います。
看護の仕事から福祉分野に変えてよかった点は何ですか?
福祉現場という環境は、ご利用者様や多くの福祉関係職員からの学びが多くあり、自分自身が成長できたと思います。
医療のスペシャリストにはなれませんでしたが、あのまま、医療現場で働いていたら「福祉」を学ぶこともありませんでしたし、「福祉」への転職は、いろんな意味で私自身を成長させてくれたと思っています。
また、多忙な医療機関での看護師業務と違って、一人ひとりのご利用者様と向かい合って援助できることでしょうか・・・。
医療現場でも個別援助を行ってはいましたが、福祉現場では、利用者と関わる時間が多い分、より利用者の立場(身になって)で考えることが出来るようになったと思います。
福祉の仕事をしていて今までで一番やりがいを感じたときはどんな時ですか?
一人ひとりの利用者やご家族の想いを大切にし、「不可能」を「可能」に出来た時です。
頭から“無理だよね”ではなくて、“どうしたら望みを叶えてあげられるか”を考え、実現した時が一番幸せですし、やりがいにもつながっています。
特別養護老人ホームで働いていて自分の中の変化は何ですか?
個々のご利用者の“心の声”を聴けるような余裕が持てるようになりました。
また、両親に対しての感謝の想いが強くなりました。
未だに「親孝行」出来ていない自分が情けないですね。両親が元気なうちに親孝行したいと思います。
そして・・・「自分の老後」を考えるようになりました。
社会福祉士になって一番大変だったのはどんなことですか?
「社会福祉士」(ソーシャルワーカー)を名乗るということは、それなりの知識と技術がいると言うことです。「社会福祉士」の資格取得はスタート地点です。「社会福祉士」として日々自己研鑽することが一番大変ですかね・・・。質問されて“分りません”はありえませんから・・・。
新しい情報や制度や法律等に関心をもって過ごすようにしています。
福祉の仕事をやっていて不安になることはありますか?
ありません。楽しいですから・・・。 知識不足は自らの努力でどうにかなります。
ただ、最近、児童虐待等のニュースが多いので、児童福祉に関わりたいという気持ちがあります。
今までの経験で一番辛いと思ったことは何ですか?
あったと思いますが、忘れました。
“忘れられること”は人間の特技ですよね。“嫌なこと”は寝たら忘れるようにしています。