高齢者福祉分野での実習の留意点
実習イメージの形成
①社会福祉対象者(高齢者)の現状を知る。
②福祉実践に対する具体的なイメージをつかみ自己課題を明確にする。
実習事前学習
①実習先に関する情報収集
②法的基盤や利用者の特色
③事業の特色や施設の改革方針など
・実習先で学びたい事柄について理解を深める。
・実習先で何を学ぼうとしているのか明確な動機につなげる。
実習目標の設定
①利用者の社会的背景を理解する。
特別養護老人ホーム(介護保険施設)を利用するに至った家族的・社会的背景を理解する。入所に至るまでの経過、手続きについても理解する。
②職員集団の内部協同関係を理解する。
特別養護老人ホームの中にどのような職種があり、業務分担と連携がどのように行われているのかを学び、ソーシャルワーカーとしてどのような役割を社会福祉士がはたしているか理解する。さらには、現場の抱えている課題に気づくことが出来る。
③利用者の身体的精神的ニーズを理解する。
特別養護老人ホームを利用している高齢者の身体的精神的状態を客観的に分析し、ニーズ分析ができ施設サービス計画書の立案が出来るようになる。
④在宅サービスの役割と実際の運営を理解する。
併設のデイサービス、ショートステイ等の事業所で実習を行うことで、各サービスが利用者、家族に果たす役割を理解する。また、職員配置や職種間の役割分担、サービスの手順等を学び、コスト意識を持ちながら運営について理解する。
⑤施設が地域社会に果たす役割について理解する。
ボランティアの受け入れ、地域行事への参加等、地域との交流の方法を学び、施設が地域の社会資源であることの認識を持てるようになる。
実習の具体的内容
①施設実習
・利用者とかかわるなかで、コミュニュケーションの取り方を理解していく。また非言語的コミュニュケーションについて考え、自ら意識し会得していくことで援助者として必要な態度を考察する。
・生活相談員の業務を体験することで、特別養護老人ホームの利用者像、家族について、家族の中で果たしている役割、施設と地域のつながりを理解する。
・介護支援専門員の業務を体験することで、ニーズの把握、分析、サービス計画作成の手法を学ぶ。
②在宅サービス事業所での実習
- 利用者とコミュニュケーションを図り、個別の介護計画に沿ってサービスが提供されていることを学ぶ。
コミュニュケーションを円滑にするための十項目
① 短い文でゆっくり話しかける。 ② 使い慣れた言葉や表現を用いる。 ③ いま関心を持っている具体的な事柄について話す。 ④ 抑揚や身振りや表情を交えたり、必要ならば実物や文字(一般的に漢字のほうが理解しやすい)、絵カードなどを加えて話す。 ⑤ 1回で理解できないときには、繰り返すか、別の表現に変える。(繰り返すときには大声を出さないこと。耳が聞こえないのではない。) ⑥ 1つのことが理解されてから次にすすむこと(混乱をひどくしないため)。 ⑦ 話すことが難しい老人には「ハイ」「イイエ」で(ことばか身振りで)答えられるように質問を工夫する。 ⑧ 話すために十分な時間を与える(老人がようやく言葉を思い出したときには相手がいない、といったことが無いように)。 ⑨ 話すことを強制したり、誤りを無理に訂正しない。自然に話が出来るような雰囲気を作ること。 ⑩ うまく反応できたときには、はっきりとほめたり、一緒に喜ぶこと。 |
1987年に制定された「社会福祉士及び介護福祉士法」の目的・定義には、社会福祉士とは何かということを規定している。すなわち、社会福祉士は社会福祉専門職であり、主な業務は生活上の課題を抱え、社会福祉サービスを必要とする高齢者、障害者、児童等の相談・援助に応じていくということにある。
現代社会に生活する人々の社会福祉ニーズは多様化・複雑化している。その上、社会福基礎構造改革により制度政策は社会福祉のあり方をさらに難しくしている。こうした状況の中では、生活上の課題を解決していくために、多様性・柔軟性のある、より専門的な社会福祉援助が必要とされてくるのである。その意味で、社会福祉への期待度は高まっている。
以上のことを踏まえて、これからの社会福祉援助者の実践者にとって、社会福祉の理念を追求し目的を達成するためには、社会福祉の知識・技術価値倫理の修得は重要になってくる。そして、そのためには、大学における学習だけではなく、実践現場との関わりにおいて十分学習することによって実践的能力を高めていくことが必要になってくるのである。具体的には、現場の現状の理解、利用者への理解を通して理論と実際を統合していく力を育成していくことが必要なのである。
ここに、社会福祉援助技術現場実習の意義がある。
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