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家族による高齢者虐待

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介護相談にやってきた一人の女性(横井文子さん:仮名)が、泣きながら「私、このままだと義母を殺しちゃいそうです」と訴えてきた。
「助けて下さい。母を預かって頂けませんか?・・・」
「私は、横井家に嫁いで30年になりますが、嫁いでから一度も旅行すら行ったことがないのです。もう疲れました。」と文子さんは言いました。

文子さんは幼いころから書道を習っており、高校を卒業後も大好きな書道だけはと続けていたという。
横井家は代々書道を教えており、そんな横井家から縁談が持ち上がり、文子さんは横井家の長男の妻となりました。
義父が師匠となった文子さんは、嫁いだ後も大好きな書道が出来ると信じ、横井家に嫁いだと言います。

横井家に嫁いだ文子さんに待っていたのは、義母(八千代さん:仮名)と小姑二人(夫の姉)からの嫌がらせでした。

義母と小姑二人からのいじめ

文子さんは、横井家の嫁として、妻として、母として、弟子として20代、30代、40代を過ごしてきたと言います。
義母は、文子さんが嫁いで来たことで家事を全くやらなくなり、すべてを文子さんに任せたと言います。
義母である八千代さんと二人の小姑(義理の姉二人)は、頻回に3人で旅行に出かけていたと言います。
公務員の夫も家事一切を文子さんに任せていました。

文子さんが50歳になろうとしている頃、義父が心疾患で倒れ、義母に認知症の症状が現れました。
文子さんは義父の病院通い、義母の世話、家事、書道教室・・・休む暇などなかったと言います。
文子さんは、義姉達に八千代さんの介護の協力を依頼しましたが、返ってきたのは「それは長男の嫁であるあなたの役目でしょ!」でした。

義父は入退院を繰り返し、八千代さんの認知症も進行し、夫の事も娘の事も理解できなくなっていきました。
八千代さんの徘徊や脱走は地域でも有名となり、警察でお世話になることも度々あったと言います。
書道教室をしながら、八千代さんの介護、家事・・・毎日休む暇もなかったと言います。
二人の小姑からも「あなたが母の認知症を進行させたのよ!」、「あなたがしっかり面倒みないから・・・」と責められたと言います。

義母の痴ほう進行と小姑二人からのいじめ

八千代さんが元気な頃には頻回に来ていた義姉妹は、八千代さんの認知症の進行に伴って来なくなったと言います。

「八千代さんを預かります。文子さんはゆっくりと旅行へでも行ってください。」と私は言いました。
そして、八千代さんを自宅までお迎えに行くことになりました。
ショートの相談員と介護職員と私の3人で玉置家を訪問し、八千代さんのお部屋に案内されました。

母屋から離れた場所にプレハブで作られた八千代さんの部屋がありました。
八千代さんの部屋には、鍵がかけられており、文子さんが来たのが分かったのか、「開けろ!開けろ!と叫びながらドアを叩く音がしました。。
文子さんは、部屋の鍵を開け、扉を開けると、八千代さんが家から飛び出してきました。
とても80歳とは思えないくらいの身の軽さです。階段を駆け下りると、裸足のまま屋外へ飛び出していきました。

痴呆が進んだ義母

八千代さんは、真っ黒に日焼けして、すれ違っただけで分かる腐敗した魚のような体臭があり、部屋には悪臭が漂い、食べた後のお膳が入口に置かれたまま、床は踏み場も無いような状態でした。
ポータブルトイレの中には排泄物がそのままになっており、紙おむつや汚れた下着なども散乱しています。
八千代さんは、日中の殆どをその部屋で暮らしているようでした。

ある日、布団の上に座っていた八千代さんが突然下痢をして、水様便をまき散らしました。
片づけるから、そのまま動かないで!という文子さんの制止を聞かず、八千代さんは動き周り、便まみれの手で壁や布団を触り大惨事に・・・。
「動かないで!」と怒鳴なれば怒鳴るほど八千代さんもイライラして、便まみれの手でつかみかかって来たと言います。

その瞬間、心の中で様々な抑えが弾け飛び、バチーンと頬を叩き、体を押さえつけ、それでも言うことを聞いてくれないので縛ったと言います。
その日から、八千代さんをこの部屋に監禁することになったと言います。

義母へのイライラから虐待に発展

厚生労働省は、介護施設の職員による高齢者への虐待行為が2018年度に621件あり、過去最多だったと発表しました。これは前年度(510件)から21.8%増加したことになります。
被害者は認知症の人が85.0%を占めており、虐待で死亡したケースも1件(1人)ありました。件数は12年連続で増えています。
中でも、家族らによる高齢者虐待の相談・通報件数は3万2231件あり、そのうち、虐待と判断されたのは1万7249件にものぼり(過去最多)殺人や心中、虐待で21人が亡くなっています。虐待の要因として、1番に挙げられたのは、「介護疲れ・介護ストレス」でした。

虐待行為のベースにあるのは「不適切ケア」と言われる17種類。その行動は、「だます」、「できることをさせない」、「子ども扱い」、「脅かす」、「レッテルを貼る」、「汚名を着せる」、「急かす」、「その人の実感を認めない」、「仲間外れ」、「もの扱い」、「無視する」、「無理強い」、「放っておく(後回し)」、「非難する(責める)」、「中断させる」、「からかう」、「軽蔑する(自尊心を傷つける)」等です。

たとえば認知症の人に繰り返し同じことを聞かれ、何度目かに聞こえないふりをして受け流すのは、不適切ケアの範疇ですが、最初から本人の呼びかけを一切無視して、あたかもそこにいない人のように振る舞えば、これは『虐待』となるのです。
もうひとつ注意しなければいけないのは、「私は介護者なのだから、思った通りにしてもいいのだ」と考えた瞬間です。
文子さんのケースも介護疲れによるストレスから来た虐待だと考えられます。

高齢者虐待は、認知症の有無や介護度などによっては本人が自覚できなかったり、逆に被害妄想だったりする場合があるため、一概に虐待と判断しにくいケースも考えられます。また、介護施設や在宅介護においても、故意に暴力を振るったのではなく、高齢者を危険から守ろうとした結果、傷つけてしまったというケースもあるでしょう。

しかし、実際に虐待が起きているのが現状です。

「自分は関係ない」、「うちは大丈夫」と思わず、高齢者虐待に対する理解を深める努力を怠らないことが大切です。

一人で悩まないこと

家族の会や相談会などを利用して愚痴を聞いてもらう。
体験者の話を聞く。
あるいは体験談を本で読む。

そうしてこれは自分だけの問題ではないと知り孤独を癒やし、孤立しないことが大切ではないかと思います。

介護の限界を越えてまで頑張りすぎないでください。
施設入所はお互いのためにもなりますから・・・。

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