今年度(令和2年)も8200名のケアマネージャー(介護支援専門員)が誕生しました。合格者数は、8200名、合格率は17.7%でした。
新型コロナウイルス感染症の影響を受けながらも、受験者数は昨年度(令和1年度:4万1049人)からおよそ5400人増加しました。
介護支援専門員実務研修受講試験に合格後は、介護支援専門員実務研修(実務研修)を修了し、所定の手続きを経て、介護支援専門員としての業務に就くことができます。
実務研修は15日間(87時間)の講義・演習と居宅介護支援事業所での3日間の実習で構成される研修であり、ケアプランの作成など、介護支援専門員として業務を行う上で基礎となる知識及び技能について学びます。
松田亜美さん(仮名)は、福祉大学を卒業し、社会福祉法人に就職しました。
特別養護老人ホームへ配属となり、介護職員として勤務する中で2年目には社会福祉士を取得しました。4年目には介護福祉士の資格を取得すると、翌年には介護支援専門員の資格も取得することが出来ました。
そして4月、人事異動により、念願だった居宅支援事業所への異動が決まり、前任者(地域包括支援センターへ異動)から利用者様20名の引継ぎが行われました。
松田さんの居宅事業所には、松田さんの他に4人の介護支援専門員がおり、事業所責任者は、母体である特別養護老人ホームの介護支援専門員(経験年数5年)であった内山雄二さん(仮名)と、その他に中村悦子さん(仮名:2年目)、平川雅子さん(仮名:10年目 非常勤)が勤務していました。
引き継ぎは一週間(実質5日間)で行われ、居宅サービス計画を持って各家庭を周り、利用者様やご家族様に担当変更の旨を説明し、サービス事業所への挨拶もバタバタ済ませました。期間内で引き継げなかったケースについては、先輩ケアマネージャーの中村さんが同行訪問するなどして教えてくれました。同世代でもあり、質問もし易かった中村さんは、松田さんにとって大きな力になったと言います。
居宅の利用者様は特養の利用者様と違い要介護度が低い方が多く、利用者様から様々な意見や要望を出されます。その度に、家族背景や家族の介護能力、過去のサービス内容や住宅改修、福祉用具の購入など基本情報を頭に入れていきます。また、利用者様個々の現病歴、既往歴などの記録を確認しながら進めて行きました。
居宅支援事業所へ異動となって3カ月間、松田さんは、昼間は、受け持ちの利用者様宅訪問したり、サービス状況の確認のためサービス事業所へ訪問するなどし、事務所に戻ってから事務作業に追われる日々でしたが、早く仕事を覚えようと必死で頑張りました。
4か月目には利用者様も5名増えて、とても勤務時間内に終えることが出来ず、帰宅時間が8時、9時へと遅くなり、精神的に余裕がなくなっていきました。
その頃、直上の上司である責任者の内山さんにも余裕がありませんでした。
責任者ということで困難事例を多く受け持ち、施設(特別養護老人ホーム)とは異なり、要介護度が重度な利用者様が多く、複数のサービスの組み合わせや、医療機関との連携や緊急時の対応など部下を労わる余裕などありませんでした。
40名の担当を持ちながら部下の仕事にも目を配ることは出来なかったと思います。
それから一か月後、松田さんから退職願が提出されました。
内山さんは、松田さんの異変に気付くことなく、退職届が出されて初めて彼女の苦悩に気づかされたと言います。
松田さんは、しばらく休養したのち、知的養護施設に転職しました。福祉大学に進学した時の原点に戻りたかったと言います。
事業所によってはギリギリの人員で運営しているところもあります。
前任者の急な退職での欠員募集だと、引き継ぎがほとんどないことも少なくありません。また、何かトラブルがあって前任者が辞めてしまったというケースでは、引き継ぎどころか、前任者の尻ぬぐいからスタートすることもあります。
介護職であれば、施設には複数のスタッフがおり、直接前任者から引き継げなくても、周りからサポートしてもらうこともできるでしょう。しかしケアマネージャーは人数が少ないですし、それぞれ自分の担当以外の仕事内容は知らないということもあります。
新人のケアマネージャーにとって、引き継ぎも十分されないまま利用者様を任されてしまうのは、非常に過酷な状況です。
そんな辛い体験をしないためにも、各居宅事業所内での教育、研修体制を整備しておく必要があると思います。
これからケアマネージャーとして勤務される方がおられると思います。
とにかく先輩ケアマネに質問し、確認し、フォローしてもらうことです。また、上司にもどんどん実情を伝え、フォローしてもらうことが必要です。
周囲も忙しかったり、面倒くさそうな対応をされると、つい遠慮してしまいますが、でもあきらめないで欲しいのです。
ケアマネとしての対応が遅れたりおざなりになることで、困るのは利用者様やそのご家族です。
そして、先輩のケアマネージャーや上司も、そのことはわかっているはず。謙虚に質問し、真摯に取り組めば、必ずや協力してくれるでしょう。
思い描いていたケアマネージャーと違ったからと嘆いてばかりいても仕方ありません。ここは覚悟が試され良い経験が積めると前向きに考えましょう。
【要介護認定に関連する業務】
■要介護認定の調査
要介護認定とは、介護保険サービスの利用を希望する方に対して「どの程度の介護度か」を認定することです。この認定のための調査を、市区町村から委託されたケアマネジャーが行うことがあります。調査自体は、利用を希望する方のご自宅や施設などへ伺って行います。
■要介護認定の申請の代行
要介護認定の申請や更新は基本的に、本人あるいはその家族が市町村の窓口で行います。しかし、なんらかの事情によりその申請が難しい場合はケアマネジャーが申請を代行することができます。
【介護支援サービスに関連する業務】
■課題分析(アセスメント)
介護サービス利用希望者の心身の状態や生活の状況、その家族の希望などを聞き取り「どのような介護サービスが適切なのか」を総合的に判断します。ケアプランを作成する際の大きな指針となるので、ここで行う相談・面接はとても重要な要素となります。
■介護サービス計画(ケアプラン)の作成
課題分析(アセスメント)によって得た情報を基に、利用者さんが受ける介護サービスの方針や内容、解決すべき課題や目標などを適切に設定できるよう計画を立てます。この計画を介護サービス計画(ケアプラン)といい、このプランの作成こそケアマネジャーの主たる業務といえます。
■サービス事業者や利用者との調整
介護サービスは、非常に多くの種類が存在しており、利用者さん自身で目的に合った適切な事業所を見つけるのは困難です。そういった場合に、ケアマネジャー(介護支援専門員)が利用者さんにさまざまな情報を提供し、利用者さんと事業所をつなぐお手伝いをします。