看取り(ターミナルケア・終末期ケア)に関する理念と実際
終末期介護の基本理念
終末期の苦痛、不快な症状を緩和し、本人(利用者)が持っている力を十分に発揮し、生命の質の高みを求めて、残された時間を充実させ、平安な死を迎えられるように、心のこもる全人的介護を行います。
終末期介護の目標
⑴ 症状コントロールと共に苦痛に対する共感的支えや、共に祈ることによって不安を取り除き、心の安らぎが保てるようにサポートします。
⑵ 精神の支え
・精神動揺、不安定な心を支える
・孤独感を支える・・・・・声掛けやふれあいによって、暖かい人間的かかわりを
大切にする。
・対話によって支える・・・訴えや話に耳を傾け、何をすべきかを発見しそれに対応する。
・励まし希望を支える・・・気休めや安易な励ましを避け、本人の希望を重視したサポートを考える。
介護の重点項目
⑴ 全身観察
バイタル他、顔色、表情、発語状態、四肢冷感や浮腫、褥創の有無など、全身状態を細かく観察し、変化が見られる場合には看護職員とよく連絡を取り合い、必要な介護を行います。
⑵ 食事・水分
状態の変化と共に、食事の形態を変えます。食事摂取の具合や量などを観察、記録し、看護職員や管理栄養士とも十分な連携を図り、少しでも経口的に摂取出来る様に努める。経口摂取が困難になってきた場合には訪室毎に一口ずつでも口に運ぶなどの努力をします。
⑶ 排泄
排尿・排便の間隔、その状態は、看護職員に報告するとともに記録する。
⑷ 寝具・寝衣
安楽な体位を保つために、クッション類などを活用する。掛け布団なども軽いものにするなど苦痛を和らげる物を考えます。寝衣(寝巻き等)は常に清潔にし、着心地良さを配慮する。また、シーツや寝巻きはしわのないようにいつも整えます。
⑸ 身体の保清
寝たきりになると不潔になりがちである。皮膚病、褥創等の予防のためにも身体を毎日清拭し、清潔を保ち、感染などを予防する。発汗が多い場合には蒸しタオルと乾タオルでふき取る。爪・頭髪も定期的に切り清潔にしておく。義歯は外し、口腔内は清潔にしておく。
⑹ 窒息を予防する
呼吸困難に対する適切な対応を行う。喉に詰まった痰や粘液は、吸引器を用いて吸引し、口腔内はスワブを用いて洗浄する。嘔吐の時は、吐物で窒息しないように顔を横に向ける。
⑺ 居室の環境
静養室(看取り居室)に移動し、居室の整理・整頓に心がける。居室環境を快適な状態(温度・湿度)に整備し、換気にも注意します。
臨終までの介護過程
①死期を予見したとき~ 心身の機能低下、疾患の発症、再発等によりその状態を改善することが困難な状態。 人生の最後にその人らしさを醸し出す、安らかな死への準備期間 |
死亡時の介護行動
医師によって入所者の死亡が確認され、死が決定的になっても、職員は利用者の人間的尊厳を尊重し、家族に対する慰めと援助を重点にして下記の援助を行う。
⑴ 外見的に痛ましい感じを与える吸引器・血圧計などの治療処置に用いた器具や、利用者に用いてある水枕や湯たんぽなどを静かに取り除く。
⑵ 外見を整えるために、目・口を閉じ、衣類を整える。
⑶ 血液沈下による外観の変化をなくし、ベッドの頭部を少し上げたり(約10度程度)、枕を高くして、頭部を高くし、口を閉じやすくする。
⑷ 以上の動作を素早く行い、利用者に礼拝し、家族に目礼してしばらく家族や親しい方々にお別れをさせる。職員は、一時的に退室するか、部屋の隅で静かに見守る。
⑸ 状況を見て、外部(親族及び葬儀会社等)への連絡を行っていただき、宗教や各家庭の慣習などを聞き、死後の処置を行う許可を得て、開始する時間などを連絡する。
⑹ 死後の準備や退所準備・死亡診断書などの打ち合わせを行う。
死後の処置
留意事項
⑴ 死体は人間として生前と同様に注意深く観察しながら、敬虔な態度で処置をする。
⑵ 利用者の宗教や各家庭の慣習を尊重し、家族と事前に打ち合わせて衣類やその着衣方法等を間違えないようにする。家族が希望すれば着衣などは一緒に行う。
⑶ 利用者の所有物、特に貴金属は処置をする前に取り外し、家族に渡す。
⑷ 処置は硬直が始まる前、つまり、死体の筋肉が弛緩している間に美しく外観を整え、利用者の外観的尊厳を保つために、死後1~2時間以内に終了する。
⑸ 実施は出来るだけ複数の職員で行う。つまり、これは、処置を出来るだけ短時間で行うことと、予期しない変化を見落とさないためである。
死後の処置の実施方法
⑴ 職員は、ガウンを着用し、必要に応じてゴム手袋をする。
⑵ オムツを当て、下腹部を押して内容物を出す。
⑶ 全身清拭を行う。
⑷ 割り箸を使って、体腔(鼻腔・口腔・外耳道・膣・肛門)内に綿花をつめる。
⑸ ひげを剃り、眼瞼を閉じさせ、整髪する。
⑹ 薄化粧をし、衣類を着せ、手を組ませる。(希望があれば、家族も一緒に行う)
⑺ 処置が終了したら、その旨を家族に伝え、ご面会していただく。
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